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最高裁判所第三小法廷 昭和53年(行ツ)51号 判決 1981年2月24日

上告人

浅野郁郎

被上告人

名古屋市教育委員会

右代表者委員長

徳武登志子

右訴訟代理人

大場民男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

地方公務員法八条七項の規定に基づく昭和二六年名古屋市人事委員会規則第七号「不利益処分についての不服申立てに関する規則」一五条の定める再審の請求は、行政事件訴訟法一四条四項にいう「審査請求」にあたるものと解するのが相当であり、したがつて、不利益処分についての審査請求又は異議申立てに対する同市人事委員会の判定に対して再審の請求があつたときは、当該不利益処分についてその請求人から提起する取消訴訟の出訴期間は、右再審の請求に対する同人事委員会の決定があつたことを知つた日から起算すべきものである。しかしながら、再審の請求自体が不適法であつて、再審事由の存在についての実体的判断がなされることなく再審の請求が却下されたときは、行政事件訴訟法一四条四項の規定を適用する余地はないのであつて、この場合には当該不利益処分の取消訴訟の出訴期間は右処分についての審査請求又は異議申立てに対する同人事委員会の判定があつたことを知つた日から起算すべきものと解するのが相当である。

記録によれば、本件転任処分についての審査請求に対する名古屋市人事委員会の判定につき上告人のした本件再審の請求は、その再審請求書記載の主張事実の実質が単に右判定を論難するか又は詳細な理由の開示を求めるべきものであるにすぎず、前記規則一五条一項各号所定の再審事由の主張に欠ける不適法なものであつて、同人事委員会においてもこれを不適法として却下したことが認められる。そうすると、結局、本件訴の出訴期間は本件転任処分についての審査請求に対する同人事委員会の判定があつたことを上告人が知つた日である昭和四九年一一月五日から起算すべきであり、同日から三箇月を経過した後に提起された本件訴は不適法たるを免れないのであつて、これと同旨の原審の判断は結論において正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は失当である。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(伊藤正己 環昌一 横井大三 寺田治郎)

上告人の上告理由

本件において原判決は、行政事件訴訟法第一四条四項の、「審査請求に対する裁決」のあつた日から三月の出訴期間を徒過した後に提起されたもので不適法であると判断されている。

右判断は、憲法及び法令の解釈を誤つた違背がある。

原判決は、その理由の一つとして『行政不服審査前置の場合の出訴は、その前提である行政上の不服申立が適法な場合に限られる。』と判断している。

この判断に従えば、却下事案はすべて出訴が許されないこととなり、右判断はいずれも憲法三二条、何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。及び同法七六条二項後段行政機関は、終審として裁判を行うことができない。の規定に違背するものである。

行政不服審査法の立法の趣旨は、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による、国民の権利利益の救済を図る(同法一条一項)ことにあり、訴願前置主義(地方公務員法第五一条二項)は、裁判を受ける権利を制限することが、その目的でないことは明らかである。

また原判決は、『地方公務員法五一条この規定との関係上再審を経た後でなければ原処分取消の訴訟を提起することができないことになるのであつて……かえつて訴訟上の救済の道を遠のかしめる結果になつて、不合理である。』と判断している。

たしかに前示地方公務員法第五一条二項は、訴願前置主義をとり、『取消しの訴えは、審査請求又は異議申立てに対する人事委員会又は異議申立てに対する人事委員会又は公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ、提起することができない。』と規定している。

しかし、行政事件訴訟法第八条二項には次のように規定されている。

『前項ただし書の場合(訴願前置)においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一、審査請求があつた日から三箇月を経過しても判決がないとき。』

右規定によれば、処分にかかる審査請求を提起してから三箇月を経ても裁決がないときは、いつでも、処分取消しの訴えを提起できることとなつており、原判決のいう、『再審を経た後でなければ原処分取消の訴訟を提起することができない。』ことはあり得ないところであり、この点に関しても原判決は、法令の適用を誤つた違背がある。

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